第62回 ニッケイと桂皮
- TAMTAM
- 17 時間前
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寒さで体がこわばりやすいこの時期、身体を温め、気の巡りを整え、血を巡らせる植物はいろいろありますが、特に、ニッケイや桂皮(ケイヒ)などがお勧めです。
ニッケイ(Cinnamomum sieboldii)と同じ属の桂皮、シナケイヒ(Cinnamomum cassia)の樹皮は、薬用では「肉桂」「桂皮」「桂枝」、食用では「シナモン」「桂皮」などと呼ばれ、さまざまに利用されています。
日本で一般的に使われている桂皮、シナケイヒ(Cinnamomum cassia )は、ベトナムや中国南部などの東南アジアから輸入されており、その約90%は食用(香りが良い)として、10%弱は薬用(辛味が強い)として用いられています。
日本在来種とされるニッケイ(ニッキ)は、奄美・沖縄を原産とし、のちに鹿児島、熊本、宮崎などへ移植されたと考えられており、ほぼ地域利用・少量利用に限られます。
鹿児島では、ニッケイを「けせんの木」「けしんの木」「ニッキ」などと呼びます。抗菌性のあるニッケイの葉2枚で餅を挟んで蒸した「ケセン団子」は、鹿児島の郷土菓子で、独特の精油のさわやかな香りがして、とても美味しいお菓子です。
昔は、鹿児島のどの家の庭先にもニッケイの木がありましたが、家庭でさまざまに利用され、根を掘り尽くしたせいか、今ではほとんど見られなくなりました。ニッケイの細い根を掘り起こして噛むと、香りは良いものの口の中が痺れることもありました。ニッケイの根皮を「肉桂」といい、桂皮の代用に薬としても用いていました。
また、ニッキ飴を頬張ると、ホッペタを膨らませニッキ飴を楽しんでいた子どもの頃を思い出します。1個5円くらいだったでしょうか。子どもにとっては高価で贅沢なお菓子でした。
❶ニッケイの花

❷ニッケイの新芽

❸シナケイヒ

➍生薬の桂皮

桂皮(ケイヒ:Cinnamomum cassia)は、身体を温め、気を整える生薬で、
味:辛、性質:温で、以下のような漢方薬などに配合されています。
風邪薬:『桂枝湯』『葛根湯』『麻黄湯』
血液の鬱滞(うったい)を改善する薬:『桂枝茯苓丸』
身体の水のバランスを整える薬:『五苓散』
『五苓散(ごれいさん)』は、「桂皮」「沢瀉(たくしゃ)」「猪苓(ちょれい)」「茯苓(ぶくりょう)」「朮(じゅつ:蒼朮、白朮)」の5つの生薬から構成され、利水作用を持ちます。一方、五苓散から「桂皮」を除いた『四苓湯(しれいとう)』は、利水作用より利尿作用が強いです。
利水作用と利尿作用の違い
利水作用:体内の水分の偏りを調整し、普通にする作用で、水分が多い場合は尿として排出されます。『五苓散』はこの利水作用を持っています。
利尿作用:尿の量を増やすことによって体内の水分を尿として排出する作用です。西洋薬の利尿剤は、健康な人が飲んでも尿量が増えますが、『五苓散』は普通の状態の人が飲んでも尿量は増えません。
『五苓散』は、「桂皮」を加えることで、単に余分な水分を排出するだけでなく、体を温めて循環を良くし、気(エネルギー)の滞りを改善します。また、不足している部分へ水を巡らせて全体の水分バランスを整えるため、より幅広い症状に対応できる漢方薬となります。
『五苓散』の利水作用は、細胞膜に存在し水分の出入りに関わるアクアポリン4(AQP4)を阻害することで水分バランスを調整することが分かっています。近年では、脳浮腫を抑制する作用も明らかになっており、体内の水分バランスが崩れることで起こるさまざまな症状に効果を示します。
例えば、車酔い・船酔い・飛行機酔い、雨などで湿度が高くなる時の偏頭痛、花粉症による鼻水や涙目、内耳の水のバランスの変調によるめまい、熱中症の予防・改善、二日酔いによる喉の渇き、嘔吐・下痢などに用いられます。
服用方法は、頓服で1包服用すると症状が改善されることが多く、長く服用しても1日分の3回ですね。
車酔い等には、乗車前に1包飲むと症状を軽減でき、快適に過ごせます。雨が降りそうな日の偏頭痛の予防も同様で、偏頭痛が起きそうと感じたらすぐに1包服用すると効果的です。すぐ飲めるようカバンに入れて持ち歩くといいですよ。また、風邪に用いる『葛根湯』もカバンに準備しておくと安心です。風邪かなと感じてすぐ飲めば未病のうちに防ぐことができます。
また、「ア・イ・ウ・ベ~~~体操」で声を出し、口や舌の筋肉を鍛え、唾液をたくさん出して、唾液の抗ウイルス力でインフルエンザを予防しましょう。
今年も当ブログをお読みいただき、ありがとうございました。
皆様もどうぞ普通の状態(元気)で、心ワクワク、穏やかで楽しい年の瀬をお過ごしください。
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