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第17回 「ひご野菜」のひとつ “ スイゼンジナ ”

TAMTAM


今回は、熊本の地名がついたスイゼンジナ(水前寺菜)です。

季節外れの植物ですが、紹介させていただきます。

スイゼンジナは、キク科ギヌラ属の多年草で、水前寺地区(現在の熊本市中央区水前寺町)の湧き水を利用して栽培されたことから「水前寺菜」と呼ばれるようになったそうです。

沖縄県では、ハンダマ(半玉)、ハルタマ、石川県ではキンジソウ(金時草)、愛知県ではシキブソウ(式部草)と呼ばれている野菜です。高知県の海岸線、沖永良部島では野生化しています。


スイゼンジナ(水前寺菜)の花


スイゼンジナは、元々は東南アジア原産の植物です。熊本では、伝来して間もないころから水前寺地区で栽培されていましたが、経済的な栽培には至らなかったようです。しかし、近年の伝統野菜ブームで見直され、あちこちで作られるようになってきました。



ひご野菜とは

現在、スイゼンジナは「ひご野菜」のひとつに指定されています。

2003年に制定された熊本市「ひご野菜」とは、(1)熊本で古くから栽培されてきたもの(2)熊本の風土に合っているもの(3)熊本の食文化にかかわるもの(4)熊本の地名・歴史にちなむもの といった4つのコンセプトに基づいた、以下15品目の野菜のことです。

①熊本京菜 ②れんこん ③熊本ねぎ ④水前寺もやし ⑤水前寺菜 ⑥水前寺せり  ⑦熊本長にんじん ⑧春日ぼうぶら(カボチャの仲間) ⑨熊本いんげん ⑩ひともじ(細ネギの仲間) ⑪芋の芽(サトイモの芽) ⑫熊本黒皮かぼちゃ ⑬ずいき(サトイモの茎) ⑭熊本赤なす ⑮水前寺のり  の15種です。



食べたことありますか ? 知っていましたか ? スイゼンジナ、東京では「金時草」という名前で呼ばれているのでしょうか?



栄養価・効能・食べ方

スイゼンジナの葉は、表は緑、裏は濃い紫色で、色合いがよいですね。葉の裏の色素は、近ごろはやりの「アントシアン」で、熊本大学理学部の吉玉教授が構造を明らかにしました(私も構造解析をお手伝いしました)。

スイゼンジナ(水前寺菜)の葉



抗酸化活性が強いですね。交感神経を抑制するGABA(γ-アミノ酪酸)も含まれ、他に、ミネラル成分のカルシウムとマグネシウムは、ホウレンソウ、シュンギクに比べて高いと言われています。 ただ、GABA、ミネラル含量は、生育時期によって大きく変動するようです。

また、抗酸化力もホウレンソウより高いと言われています。しかし、葉の裏の紫色が薄いモノは抗酸化力が弱いので、水前寺菜を買うときは、葉の裏の色が濃いのを選びましょう。

中国ではスイゼンジナの全草を「観音莧(カンノンケン:guan yiu xian)」と言い、止血や解毒により腫れを消す等の効果があるので、月経痛、出血、潰瘍(かいよう)などに用いると記されています。長引く潰瘍に良いとありますので、ストレス性の潰瘍になりやすい人は予防に食してみては如何でしょうか?


スイゼンジナには独特のぬめりがあります。食べ方は、柔らかい葉茎を熱湯に数秒、軽く湯通し、あえ物、炒め物などにして、食べるのが良いでしょう。煮出した汁に酢を加えるとピンク色になります。この煮汁でご飯を染め寿司等に。食べ方、いろいろ試して下さい。

「ひご野菜」を広めるには、手軽で美味しいレシピが必要です。皆さん料理方法を工夫して「ひご野菜」を広めていただけませんでしょうか



くまもと花博の観察会


さて「第38回くまもと花とみどりの博覧会(くまもと花博)」が、3月19日~5月22日に開催されます。  ※くまもと花博公式HP:https://kumaryokkafair.com/

「くまもと花博」の 観察会の1ヶ所「水前寺公園内〜江津湖」の 植物(特に薬用植物)を2時間ほどかけて見て廻りました。


その際、水前寺公園内の茶屋「古今伝授之間」に寄り「抹茶セット」をいただきました。

水前寺公園内「古今伝授之間」の抹茶セット(友人撮影)


抹茶はご存知のように、茶葉の粉末を飲みます。茶葉は、700年代、薬用として中国から伝わりました。

菓子は、「加勢以多(かせいた)」。マルメロ(西洋カリン)のお菓子です。現在はマルメロではなく、カリンのジャムを餅粉の種ではさみ、「九曜の紋(細川家の家紋)」が焼き付けられています。

抹茶セットの楊枝はクロモジの枝。「大阪ひょうたんや」の楊枝です。「ひょうたんや」は、創業100年の黒文字を使った箸、楊枝を製造販売する会社です。

クロモジは箸や楊枝だけでなく、民間薬として枝葉を、脚気、急性胃腸炎に用います。また、止血には粉末を患部に塗布したり、皮膚病、温補には枝葉を浴湯料として用います。枝葉を1~2週間ほど乾かすことで、フレッシュなお茶ができます。清々しい匂いが漂い和製ハーブティーとして楽しめます。

抹茶セットは、温かく、ほのかに甘く、疲れが和らぎました。



広がる伝統野菜「水前寺菜」


スイゼンジナ(水前寺菜)は、寒さには弱いですが、暑さに強い野菜で、夏に盛んに成長する夏の野菜です。

収穫は6月~11月頃、美味しい旬の時期は7月~9月頃です。葉の色が綺麗なのは6〜7月、10〜11月ですね。あまりにも暑い8〜9月は、葉の裏の紫色の発色が悪いようです。

ただ、水前寺公園内では、周囲にも「水前寺菜」が植えられ、水前寺菜を用いた製品も増えています。"ひご野菜"として「水前寺菜」を栽培しはじめて25年ほど。ようやく「水前寺菜」は熊本の伝統野菜として根付いてきたのかな?


冬の水前寺公園前のお土産屋さんの横の水前寺菜




<ご参考>

水前寺菜についてもっとお知りになりたい方は以下のサイトで

「水前寺菜の科学 —その魅力と不思議を追って— 」をお求めください。

私(矢原正治)も、少し書かせてもらっています。

清水 康弘(著)、矢原 正治、五田 真生、林 美央 その他


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