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第36回  種子を食べるクリ


秋を代表する味覚の「クリ(栗)」は、ブナ科クリ属の落葉樹の総称で、種子を食用にします。学名はCastanea crenata Siebold et Zucc.です。

世界中には数多くの品種があり、大きく分けると日本栗(和栗)、中国栗、ヨーロッパ栗、アメリカ栗などで、日本栗(和栗)はダントツで大粒です。



クリの実(2021年8月21日撮影)


■栗の主な産地

2021年、栗の収穫量は、全国で15,700トン、1位:茨城県、2位:熊本県、3位:愛媛県、4位:岐阜県の4県で全国の半分を締めています。(2021年度農林水産省の果樹生産出荷統計参照)

熊本県では、山鹿、山江、球磨などが名産地で、今年も9〜11月に「くまもと山鹿和栗スイーツフェア」が行われています。

宮崎県なら日之影。高千穂のマロンハウスの「栗九里(くりくり)」という「栗きんとん」が美味しいですよ。原材料は、栗が主に、少々の砂糖のみ。素朴で栗本来の風味が感じられます。ちなみに宮崎県の収穫量は6位です。


■栗のブランド

栗は縄文時代から重要な食用として利用されていました。「丹波栗」が大粒で有名で、古事記、万葉集、日本書記にも出てくる歴史あるモノで、江戸時代に全国に広まったと言われています。全国にはいろいろな品種があるようです。


■栗の収穫期と旬

5月に独特の香りが漂い始めると、クリの開花が分かります。穂のように長い雄花の香りです。雌花は、雄花の根元に小さい花を咲かせ、受粉するとイガイガ(皮)の中に種子(食べる部分)ができます。

普通、栗の収穫は、8月中旬頃から始まり、9月から10月が旬です。


クリの花、満開に咲く(2023年5月28日撮影)


クリの雄花(2023年5月28日撮影)

細い棒状なのは雄蕊、先の黄色いのが葯(ヤク)、花粉が入っています。

クリの雄花&雌花:中央の丸いモノ(2023年5月28日撮影)


クリのイガイガ:皮 (2023年5月28日撮影)


■クリに含まれる主な有効成分と効用

栗(食用部位)には、糖質やアミノ酸の代謝に関わる「ビタミンB1」と鬼皮(果肉)があるので加熱しても壊れにくい「ビタミンC」等の水溶性ビタミンや、ナトリウムを排出し、高血圧予防などに効果がある「カリウム」、抗酸化や抗菌性などを示すポリフェノール(gallic acid:没食子酸)が多く含まれます。

クリの葉、イガ、樹皮、渋皮に含まれる多量のタンニン(ポリフェノール)には、抗酸化作用があり、老化の防止やガンの予防に効果があります。

「ウルシかぶれ、やけど」には、葉の煎液を冷やして患部を洗います。葉が無い時はイガや樹皮でも良いようです。


■クリの選び方・保存法

①美味しいクリの選び方

鬼皮が茶色で濃く、張りと光沢があり、ふっくらと丸みがあるもの、ずっしりと重みがあるものを選びましょう。

②避けたほうがいいクリ

一部が黒く傷があり、虫食い等で傷んでいるのは避けましょう。

③保存法

ポリ袋に入れ、袋の口を折っただけで密封せず、冷蔵庫のチルドルーム(0℃ぐらい)で、一週間ぐらい持ちます。ただ、早めに食べた方が美味しいですよ。


■クリに関する豆知識

<天津甘栗>

甘栗は、鬼皮が付いたままの栗を、熱し小石中で砂糖をかけながら煎ったものです。

日本では「天津甘栗」が有名です。天津と頭に付きますが、日本で作られた甘栗です。

当初、北京の山中で収穫され、天津港から日本に輸出された栗で作ったので「天津甘栗」の名がつきました。1995年ぐらいに「天津甘栗」の製造法が、日本から中国に逆輸入されて以来、「天津甘栗」は、新栗が出る秋〜冬、天津などの名物になっています。


<材木として>

クリの材は大変硬く、鉄道の枕木に利用され、明治時代の近代化に貢献したようです。

重硬で、強く、しかも耐久性が高いことから、建築に用いると非常に丈夫で、昔から建物の土台などに栗材が用いられてきていました。


<モンブラン>

クリのスイーツに「モンブラン」があります。このネーミング、栗とは関係ないようです。洋菓子で山のような形をしたお菓子だから「モンブラン」とのこと。フランス語で「モン(Mont)=山」、「ブラン(Blanc)=白」という意味です。



さて、秋の味覚といえば、栗の他にも、キノコがとても美味しいですね。ただ、「キノコ」を生で食べると、嘔吐や下痢を起こすことがあるので要注意です。きちんと熱を加えて、美味しく食べてください。

また、たまに、市場で毒キノコが売られていることがあります、よく分からないキノコは食べないように注意いしてください。

また、大豆などのマメ科の豆類も生で食べると、同じように嘔吐下痢を起こすことがありますので、必ず加熱して食べましょう。


「食欲の秋」とよくいいますが、なぜ秋に食欲が増すのでしょうか?それは、秋になると空気が乾燥し、胃の水(水滞)が減り、胃の調子が良くなるからです。

ただ、夏バテで胃腸が弱っている人は、食べ過ぎると体調を崩します。胃が弱ったまま冬になると、風邪を引きやすくなるので、食べ過ぎず、胃の調子を整えて「食欲の秋」をお楽しみください。


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